最も効率的な英語勉強法
英語が読めるために必要な知識は単語と文法です。英語が聴こえるために必要な知識は発音と英語が読めることです。これらの知識を効率よく独学によって学習する方法をまとめました。
理想の学習法
英語学習は数年単位の期間を要します。そしてその期間の中で最終的に最も重要で時間を要するのが Immersion です。Immersion とは英語を英語で学び英語のコンテンツをある程度楽しんでいる状態のことで、これが英語学習において理想の状態です。なのでこの状態にいかに早くたどり着くか、そしてこの期間をいかに快適なものにするかが学習を継続するために重要です。そこで効果的に Immersion をするための前提として、頻出英単語と文法の深い理解が必要になります。なのでまずこれらをクリアすることを直近の目標にすると良いです。
単語
NGSL
研究によると、ネイティブの語彙数は 30,000 語程度です。しかし日常的に使われる頻出英単語数は 2800 語程度で、87−94%の確率で使用されます。1なのでまずこれらの単語を完璧に覚えるのが効率的です。具体的な単語リストはNGSLを参照してください。
Zipf’s law
後述する Immersion をしている時に、分からない単語に当たることが多々あると思います。その時は、その単語がどれくらいの頻度で使われるかを調べて、頻度の高い単語を優先することが効率的です。英単語の難易度とその英単語が使われる頻度は指数関数的に反比例の関係にあるからです。2
例えばweblio 英語辞書では学習レベルという項目があり参考になります。
Spaced Repetition
何かを記憶するということは大変です。心理学者のヘルマン・エビングハウスの実験から得られた忘却曲線のグラフによると、指数関数的に忘却することが分かります。3
しかし、繰り返し復習することで記憶が定着するということも同時にグラフから読み取れます。
そこで効率的な復習手法として Spaced repetitionという手法があります。これは復習する期間を指数関数的に増やしていくというものです。この手法が学習効率の向上に効果的であることが実験により証明されています。4
Anki
Spaced Repetition Software の 1 つとして Anki があります。iOS 以外は無料で利用できます。これはフラッシュカードを作成、管理するためのソフトウェアです。覚えたい単語でカードを作り、そのカードは忘却曲線にしたがって毎日のタスクに現れます。作ったカードリスト(デッキ)を公開することも出来るので、まずは公開されているデッキをダウンロードして初めることをおすすめします。
Anki の使い方の詳細は以下を参照してください。
単語の覚え方
英単語の覚え方についてですが、以下の 2 つがその単語を覚えたかの指標になると思います。
- その単語の意味が瞬時に出てくるかどうか
- その単語を使って文を作ることが出来るかどうか
例えばその単語の意味が分かるというのは、その単語を使った文を理解することが出来て、その単語を説明することが出来るということです。その単語を説明するためには、その単語のコアなイメージを持つ必要があります。
またその単語を使って文を作るためにはその単語の品詞を知っている必要があります。なので単語を覚える際には、その単語の意味を日本語で覚えるだけでなく、その単語が文脈の中でどのように使用しているか知る必要があります。
文法
文法が分からないと、自信を持って英文を読むことが出来ませんし、全く話すことが出来ません。文法が分からないというのは、英文法の体系的な法則や構造すなわち、仕組みが分からないということです。仕組みが分からないと、習った断片的な文法知識をすべて覚える必要があります。そうした煩雑な文法知識は時間とともに忘れてしまいます。こういった悪循環が、英語が苦手になる原因の 1 つだと思います。
Frame of Reference
英文法を理解するために、英語リーディング教本を一読することをおすすめします。これは薬袋先生が考案した英語文法の Frame of Reference を学ぶための本です。 FoR とは、物事を考えるための前提となる事実や基準のことです。つまり英語文法の FoR とは、英語を読むための前提となる事実や基準を学び、その法則に基づき英語構文を判断するものです。
FoR を学ぶメリットは例えば以下が挙げられます:
- 曖昧さをほとんど排除した読み方ができるようになる
- 英英辞典が使えるようになる
- 正しい英作文が書けるようになる(正しい英文が分かる)
メリットの 1 つとして英英辞書が使えるようになることがあります。英英辞書の解説や定義は非常に簡潔な英語なのですが、簡潔なゆえ文法が分からないと全く読めません。また、単語は品詞によって異なった意味を持つことが多いです。なので分からない単語に当たったときその単語の品詞が分からないと、辞書を使うことが出来ないのです。また英作文を書く時に文法的に正しい英文が書けているかが分かるようになります。文法的に正しい英文であれば、たとえ不自然な言い回しであっても通じる文が書けるということです。それが不自然かどうか判断するというのは後述する Immersion によって身に付ける必要があります。
2 つの英語リーディング教本
現在、薬袋先生の英語リーディング教本は英語リーディング教本:基本から学ぶ(青リー教)と基本文法から学ぶ 英語リーディング教本(黄リー教)の 2 つがあります。後発の黄リー教は青リー教の範囲を網羅しているので、一冊で済ませたい方には黄リー教をおすすめします。しかし、青リー教のメリットもあります。
- 比較的安い
- 黄リー教にない練習問題と解説がある
- 中学文法が分かる人には黄リー教は冗長
発音
日本人にとって英語の発音はとても難しいと思います。なぜなら:
- 日本語に存在しない音がある
- 発声の仕方が根本的に違う
最も難しい英語の発音は母音だと思います。以下の図はアメリカ英語と日本語の Vowel Diagramを重ねたものです。日本語に存在しない音が英語に存在することが分かります。存在しない音は言語として知覚することが出来ません。これが英語を聞き取れない原因の 1 つだと思います。
発音を学ぶため必要な知識はIPAです。IPA を学ぶことで具体的に何を学ぶ必要があるのかラベル付けが出来るようになります。また、辞書を引いたときその単語の発音が分かるようになります。
アメリカ英語とイギリス英語
IPA を学ぶのに一番いい教材は YouTube だと思います。しかし、その英語がアメリカ英語かイギリス英語(RP)か注意する必要があります。/r/
などの発音に違いがあるからです。例えば以下は RP の例です。RP は/r/
などの音を/ə/
と発音します。この音は Schwa と呼ばれ、英語の発音で最も頻繁に使われる音で、日本語には存在しない音なので意識的に学ぶ必要があります。
例えば以下はアメリカ英語の例です。
アメリカ英語とイギリス英語の違いも YouTube にたくさん情報があります。
一人で発音をチェックする方法
自分の発音をチェックする方法として、ネイティブにお願いするのが理想だと思いますが、最近では AI を利用することも簡単に出来ます。AI を使ったアプリでELSAや Speak というものがあります。
発声については英語の発音は常に喉を開けて口と舌で音を作る感じですが、日本語は喉を開けたり閉じたりするという違いがあると思います。ネイティブがどのように発音しているか研究するのに YouGlish というサイトが便利です。発音が難しい単語を入力すると、その単語が使われている動画を再生してくれます。
Immersion
Language Immersion とは言語学習テクニックの 1 つです。Immersion とは自分自身を出来る限り学んでいる言語環境に置くことを意味します。英英辞典を使ったり、デバイスの言語設定を英語にしたり、通勤通学中に Podcast などを聞いたりするのが Immersion の一例です。
私がおすすめする Immersion は、ネイティブ向けのコンテンツを注意深く聴くことです。このときに、ネイティブと同じように理解し、コンテンツを自然に楽しむことが、英語学習の理想の状態だからです。
Refold という言語学習コミュニティサイトで Immersion を用いた言語学習テクニックが体系的に紹介されています。また、Refold の創立者である Matt vs Japanのチャンネルも大変参考になります。
Comprehensible Input
Comprehensible Input とは言語学者 Stephen Krashen が提案した Input hypothesis において最も重要な概念です。5 これは言語学習において’Comprehensible(理解可能)‘なインプットのみが言語獲得をもたらすという仮説です。言語獲得(Language Acquisition)や Input hypothesis について以下のビデオで紹介されています。
web page
- BBC などのニュースサイト、YouTube の Transcript から chrome extension を使って、分からない単語を Anki へ
Kindle
洋書を英語学習に利用するのも効果的な Immersion の 1 つです。洋書を読むのに紙の本よりも Kindle などの電子書籍を利用することをおすすめします。なぜなら:
電子書籍は無料のものがたくさんある
例えばKindle は、電子書籍が Word Wise に対応していれば難しい単語のそばに意味を表示できる
分からない単語をその場でポップアップ表示できる
Vocabulary Builder から Anki へ Kindle で調べた単語をインポートすれば、復習することが出来ます。一括作成する方法を以下の記事でまとめました。
YouTube, Podcast
先述した Input hypothesis を参考にある程度理解できて面白いコンテンツを探すと良いと思います。例えば料理やガジェットの紹介、レビューなどの何かを説明する系の動画は Comprehensible Input になりやすいと思います。言っていることが分からなくても、何を言っているのか想像しやすいからです。
興味のあるコンテンツを探す
- 高音質
- 対話形式が最も自然だが難しい
- 紹介、レビュー系コンテンツがやさしめ
英語学習者向けのコンテンツは、ゆっくりで不自然だったり、興味のあるものを探すのが難しいのでおすすめしません。
YouTube などの動画コンテンツの場合 Transcript を表示する機能があるので、動画の内容を予め予習してから観るというのも助けになると思います。
オススメコンテンツ
ガジェット系、比較的ゆっくりなアメリカ英語、レビュー形式
科学、文学、ゆっくりなアメリカ英語(lex)、対話形式
科学、イギリス英語、ナレーション
科学、アメリカ英語、対話形式と説明
学習継続のコツ
私は学生時代英語がとても苦手でした(自己採点 TOEIC500 点くらい)が、一日 1 時間くらいの学習ペースで 5 年ほど以上で紹介した学習を続けて、英語がある程度分かる(TOEIC 985 点)ようになりました。ここで英語が分かるというのは、ネイティブ向けのコンテンツを自然に楽しむことができ、言いたいことを伝える事が出来るという意味です。CEFRでいうと C1-B2 レベルです。 2 時間というのは通学通勤中などに Podcast などを聞いたり、前述した Immersion する時間を含みます。とはいえ効果的な学習法を確立するまで 2 年程掛かり、勉強をしていなかった時期もありましたので、効率よく学習すれば 2-3 年ほどで英語が分かるようになると思います。
英語力を可視化
英語学習を続けるコツの 1 つとして、自分の英語力をテストなどを使って数値化することをおすすめします。自分の成長を記録することでモチベーションが上がると思います。しかし TOEIC などのテストは英語力を数値化するのには有効ですが、英語学習そのものには向きません。例えば TOEIC のテストの内容はある程度実生活的なものですが、以下の理由からおすすめしません。
- 不自然にゆっくりだったり、はっきりと喋っていることが多い
- ビジネス的な内容がつまらない
つまらないというと幼稚なようですが、数年単位の英語学習を続けるためには楽しむことが出来るかどうかが重要なのです。
まとめ
- 頻出英単語を Anki で覚える
- 英語リーディング教本で英文法を理解する
- IPA を学んで、日本語に存在しない音を身につける
- 好きな英語のコンテンツを楽しむ
- 分からない単語や表現を Anki で覚えていく
- たまに TOEIC などのテストで英語力を可視化する
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